一般社団法人 国際ナーシングドゥーラ®協会設立趣意書

設立の目的 

 

 弊協会は、現代の日本が直面としている「産後支援者不足」と「潜在看護職活用」という課題解決の一助になるために「ナーシングドゥーラ®︎」という看護職の育成と普及を目的として、2016年8月10日に設立しました。

 

 「ナーシングドゥーラ®︎」とは、育児家事等の療養上の世話という看護業務をもって、家族の日々の暮らしを看護職として看護り、地域での親子保健の一助に寄与する専門職「ナーシングドゥーラ®」という人材です。

 

 当協会は、「ナーシングドゥーラ®︎」の育成と普及をもって、地域で暮らす家族の笑顔づくりと、看護師有資格者の離職防止に貢献致します。

   

設立の背景

 昨今、日本では少子核家族化、初産年齢の高齢化、祖父母世代の有職率の増加等により、従来親族から得られた産後支援を家族内で得る事できず、ワンオペ育児や産後うつ・虐待・妊産婦自殺等の社会問題が顕在化しています。

 

 このため、令和6年6月26日に開催された「第1回妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会( こども家庭庁成育局母子保健課)では「誰ひとり取り残すことなく妊産婦に対し、安心・安全で健やかな妊娠・出産、産後をサポート」づくりについて活発な意見交換がなされました。

 

 ところで、医学的には、産後6~8週間の女性は「褥婦(じょくふ)」と呼ばれ、出産の侵襲とホルモンの影響で心身共に療養が必要です。また、新生児は、日々発達しつつ突然死や乳汁や唾液の誤飲リスク等、家庭内事故が起こりやすい時期でもあります。

 さらに、男性の育児休暇が制度化されてきてはいますが、日々発達し個人差が大きい新生児と褥婦の療養上の世話を、少子社会で育った褥婦のパートナーである男性に任せることは大変負担が大きく、男性のうつが問題になっています。

 

 つまり、少子核家族社会では、褥婦が自宅療養するには褥婦だけでなく、新生児、並びに、男性の心身含めた、産後の家族すべての心身の異常の予防と早期発見などの看護的知識とスキルを持って看護る支援者が必要なのです。

 

 ところで、多国籍間の妊娠出産が当たり前の海外では、オランダのクラームゾルフスウェーデンの地域看護師台湾の「到府月子保母」欧米のドゥーラのように、産後の家事育児のモデリング役として、公的私的サービスを提供している国もあります。

 

 もちろん、日本でも、児童福祉法の改正により養育支援訪問事業が拡大され、また、子ども子育て支援法の制定により産前産後サポート事業のガイドラインが公表され、産後支援の整備が進められています。

 しかし、少子核家族それらの市町村の7割近くが産後支援者の人材不足と資質確保を課題としています。

  

 一方、日本では、看護師という国家資格者を持つ潜在看護師は70万人と言われており、その理由には、それぞれの家事や育児との両立の困難や、医師の指示の元に行う診療の保助という看護が、高度な医療知識と技術が必要になってきており、適応困難になってきていると言われています。

 

  つまり、「私的生活との両立がしやすい」「人のためになりたくて看護職を志した者の思いを社会に活かす」「主な看護業務である療養上の世話の専門家として働く」「組織に属さずに働ける」「看護職としての経験と知識を地域で活かせる」そんな、看護職の働き方が求められているのです。

 

 そこで、一般社団法人国際ナーシングドーラ協会は、育児家事等の療養上の世話、つまり、看護職として対象者を看て、疾病や事故予防対応や、より健康的な暮らしを目指して関われる専門職「ナーシングドゥーラ®」という人材を2016年に開発し、育成事業を開始しました。

 

 弊協会は、広く社会にナーシングドゥーラ®︎」という看護職の働き方があることを紹介することで、看護師有資格者の離職防止と地域で暮らす家族の笑顔づくりに貢献致します。

  

初版  2016.08.10

第二版 2019.06.25

第三版 2025.01.27

 

「ナーシングドゥーラ®」から得られること。

 

新生児にとって

・新生児ケア経験がある看護師による養育が家庭で受けられる。

・母親や家族から養育の質が上がる可能性がある。

・新生児の異常の早期発見や早期対応に繋がる可能性がある。

 

母親にとって

・新生児やじょくふケア経験がある看護職と繋がることにより孤立感が低下する。

・タイムリーに育児相談ができる。

・パートナーや上の子・祖父母など、家族との関わりについて相談できる相手が確保できる。

 

パートナーにとって

・父親やパートナーとしての役割についての相談窓口が確保できる。

 

祖父母にとって

・最近の育児方法について学ぶことができる。

・自分たちの子育てが肯定され壮年期老年期の発達課題が達成できる。

 

 

「ナーシングドゥーラ®」になると得られること。

看護職にとって

・個人事業主としての活動を前提としており、自らの育児や家事との両立が可能である。

・新生児への養育やじょくふや家族への支援という家族看護が展開できる。

・看護師としての経験や知識の上に、育児や家事経験を活かし、地域の子育て支援に看護師として参与できる。

・高学歴化高機能化組織化する医療機関とは異なる「療養上の世話」という地域看護が展開できる。

・新生児や産後間もない女性に接することにより、看護職自身が癒されセロトニンが上昇する。

・外国の看護師資格を持つ者が国内の子育て支援に参与できる。

・育児や家事で退職した看護職にとって復職支援となる。

 

ナーシングドゥーラ®による「産後ヘルスプロモーション」   (一社)国際ナーシングドゥーラ協会©2019