産後だけでなく被災時も。第83回日本公衆衛生学会での発表報告

看護職の新しい働き方「ナーシングドゥーラ®︎」開発から11年目

こんにちは。わたなべれいこです。

 

本日は、第83回日本公衆衛生学でのパネル発表を報告します。

 

 

 

 

ナーシングドゥーラ®︎ 開発から11年目の報告

 

渡邉玲子/一社) 国際ナーシングドゥーラ®︎協会代表理事、

草川 功/同協会顧問・小児科医、

坂口枝利/株) ジョナエプレイス代表取締役

 

【はじめに】

 弊協会は、勤務経験がある看護師のスキルアップ教育機関です。

 「ナーシングドゥーラ®︎」とは、医師の指示が不要な看護(療養上の世話*1)を専門とする看護職で、産後家族と地域のヘルスプロモーション*2)を目的とした事業を展開します。

 「ナーシングドゥーラ®︎」とは、社会学のグループダイナミクス論*3)、

精神保健福祉領域のストレングスモデル*4)、

コミュニケーション論*5)、

ヘルスプロモーション2)等を参考にした療養上の世話を専門とする看護職の新しい働き方の概念です。

 

なお、 「ナーシングドゥーラ®︎」は、2013年、産後ドゥーラ*6)一期生として母支援を開始した私が、

看護職として家族支援がしたいと「Nursing-doula」と名乗ったのが始まりです。

 

その後、共に働く仲間を養成したいと、2016年に弊協会を設立し「ナーシングドゥーラ®︎養成講座」を開始しました。

 

 【本報告の目的】

 講座開始から11年目の2024年に、私は若年性両側性感音難聴になったため、現役を引退することとなりました。

 そこで、今後の「ナーシングドゥーラ®︎養成講座(以下「講座」とする。)」の開催継続可否と、協会の役割を検討したので報告いたします。

 

【用語の定義】

 「ナーシングドゥーラ®︎ 」養成講座は、web講座・演習・同行訪問・単独訪問実習など全108時間からなる実践講座*7)です。

 全課程を修了した者に対する講師評価、4名の実習協力者様評価、自己評価をもとに審査し、合格した者だけが「認定ナーシングドーラ®︎Pro」としての登録と開業を協会が認めます。

 また、開業者には、弊協会開発の「ナーシングドゥーラ®︎保険」または同等の保険への加入を勧めます。

 ところで、他の「産後ドゥーラ」と異なる点は、看護師として勤務経験があるため、異常が起こりやすい周産期の母子への救急時対応が可能な点です。

 また、家族の危機と言われている産後に、家族全員を対して疾病予防に関われることです。さらに、お客様の指示があれば、産後だけでなく子どもの成長と共に出会う家族危機予防にご利用いただける事です。

 そして、保助看法第37条では、看護師は医師の指示がなくても、臨時応急の手当てを行うことができるとされているため、万一の際は、心肺蘇生やケガの手当等の緊急対応が可能です。

 なお、公的事業と異なる点は、要支援家庭でなくても利用できる点です。

 

 

【方法】

 2016年8月〜2024年5月の受講申請書と、2024年5月実施の

アンケート結果から考察した。

 

【倫理的配慮】 

本報告は、関係者からの了承を得て個人特定されないように配慮した。

 

【結果】

1.受講申請者は98人。うち、開業を認めるPro講座の登録許可数は課程を修了した者は95人。

2.審査合格者はPro80人、認定6人、ジュニア6人、中断3名。

3.平均年齢は43歳であった。

4.看護師以外に保健師又は助産師有資格者が約4割。

5.開始時に無職又はフリーターであった者が約7割。

6.居住地は日本全域だった。

7.アンケート回収率は95 人中43人で45.7%

8.開業又は開業予定者は35人/回答者43人(81.3%)。

9.開業者月平均売上高は0〜60万円(平均16万円)。

10.登録客数は0〜100家族(平均20.7家族)。

11.公的機関経由顧客割合は0〜100%(平均35.7%)。

12.養育支援訪問事業参入者は10人/43名(23.3%)だった。

13.経営課題としては「スタッフ不足」が半数以上。

14.協会との関係についての5段階評価は平均3.67だった。協会への希望としては「受講生同士の交流促進」だった。

 

【考察】

 結果から、様々な年代、全国各地、様々な看護資格、の方が受講していることがわかった。

 これは、新型コロナ感染症の流行時に「オンラインスタイル」に講座を切り替えた事と関係があったと考えた。

 

 また、看護職の離職理由としては「家事や育児や看病等の両立」「高度医療知識経験不足」「職場の人間関係」が

あげられていた8)事から、療養上の世話が専門で開業という働き方が、潜在看護職のニーズにあっている可能性がある。

 

 さらに、受講生が持つ看護資格が「2020年看護職員就業者数の推移(*8)」のデータよりは、保健師や助産師割合が多かったことから、「産後家族」を対象にした看護実践は、看護職資格種別に関係なく関心がある可能性も伺えた。

 

 次に、売上高、顧客数、開業形態、顧客確保の方法は多様であった。

 これは、ナーシングドゥーラ®︎が、学歴や資格、経歴や出産育児経験に関わらず、各自のライフスタイルや関心・個性・経済状態を反映できる働き方である事との関係も推測された。

 さらに、養育支援訪問事業等*9)の様々な公的事業に10名が参入していたことから、行政からの信頼を得ている可能性が示唆された。

 

 ところで、受講後の所属が訪問看護ステーションであった人もいた。

 このことから、訪問看護ステーションを拠点としたナーシングドゥーラ®︎サービスが展開されている事も予想できた。

 

 さらに、開業者は経営課題として人材不足と広報を挙げていたことから、協会は開業者に対してスタッフ採用や広報領域で関わる役割もあることがわかった。

 

 さて、今回のアンケートには、協会への注文として「受講生同士の交流」を希望する記載があった。

 このため、2024年7月より、月一回の交流会を開催している。

 その結果、被災地の親子やクリニックと開業助産師*10)との交流が実現し、危機状況では看護職からの

「個別な声掛け」が、人々に安心感を提供する事を学んだ。

 

このことから、

ナーシングドゥーラ®︎は、

産後だけでなく被災時も関われる可能性が予想できた

 

【結論】

 

 日本では看護師不足が深刻であるにも関わらず、潜在看護師は約71万人と言われており、その理由は

 

 

結婚妊娠出産介護等のライフイベントが挙げられていた*8)。

 

 

 しかし、本調査から、弊講座の受講生は、卒後様々な形で全国で活躍し「ナーシングドゥーラになってよかった」と仰っている。

 

 

 よって、今後も「ナーシングドゥーラ®︎」養成講座を継続開催することとした。

 

 

そして、今後は、

 

「ナーシングドゥーラ®︎」が「産後からはじまる家族と地域のヘルスプロモーション」や「潜在看護師活用」につながる可能性、

 

並びに、「被災者支援看護師」として、防災担当の皆様との連携についても模索していきたい。

 

 

参考】

 

1)厚生労働省 保健師助産師看護師法.

2)島内憲夫,ヘルスプロモーションの概念,国民衛生の動向.

3)杉万敏夫;グループダイナミクス入門,世界思想社,2015.

4)萱間真美;ストレングスモデル実践術,医学書院2020.

5)諏訪茂樹;看護のためのコミュニケーションと人間関係,医学書院,2019.

6)一般社団法人ドゥーラ協会HP.憲夫,

7) 一般社団法人国際ナーシングドゥーラ®︎協会HP.

8)厚生労働省;看護師等(看護職員)の確保を巡る状況,2020,

9)厚生労働省;養育支援訪問事業

10)一社)石川県助産師会HP,